塗装ブースにおける排気ファンは、作業環境の安全性と製品品質を維持するうえで極めて重要な役割を果たします。今回実施した排気ファンの定期メンテナンスでは、内部に付着した塗料、モーターの状態、ベルトや軸受けのコンディションに着目し、異常兆候の早期発見と対応を行いました。本記事ではその具体的な点検内容と対応策をプロ目線で詳述します。
ケーシング内部に塗料が多く付着|風量低下と効率悪化の原因に
ケーシング内部を点検したところ、塗料の付着が顕著でした。塗装ブースでは排気ファンを通じてミストやガスを外部に排出しますが、その過程で微細な塗料粒子が内部に堆積し、風量の低下や羽根車のバランス崩れを引き起こします。このまま放置すれば、排気効率が悪化し、作業環境の安全性に影響を与えるため、付着物の除去と定期的なクリーニングが不可欠です。


モーターにホコリ、Vベルトには亀裂|駆動系の劣化が進行
モーター本体にはホコリの堆積が見られました。これは冷却効果の低下を招き、モーターの過熱リスクを高めます。また、Vベルトには経年劣化による亀裂が確認されました。ベルトの劣化は駆動力の伝達不良を引き起こすため、新品へと即時交換を実施。駆動系の健全性維持には、摩耗や張力の定期チェックが重要です。
軸受けにグリス不足と異音|ベアリングの重大トラブル兆候
軸受け(ベアリング)を点検した結果、グリスの供給不足と手動動作時の異常音が確認されました。これは潤滑不良による金属摩耗の進行を示しており、早期対応を怠ると焼き付きや破損の恐れがあります。異常が発見された場合には、グリスの再充填だけでなく、場合によっては軸受け交換も視野に入れるべきです。モーター単体には異常がなかったため、現時点での損傷はベアリング周辺に限定されていると判断しました。


運転中に振動を確認|構成部品のアンバランスに要注意
運転中には明らかな振動が確認されました。振動はファンバランスの崩れ、羽根の歪み、軸受けの摩耗などが主な原因として考えられます。特に羽根車に塗料が偏って付着していたため、回転バランスが損なわれている可能性が高いです。この振動を放置すると、軸心ズレやさらなる機械損傷を引き起こしかねません。


担当者所感
今回の点検を通じて感じたのは、日常点検では目が届きにくい内部の劣化が、実はトラブルの温床であるということです。特に塗料の付着は、設備全体に渡って影響を及ぼす厄介な要素であり、予防保全の重要性を再認識しました。
振動や異音といった初期症状を見逃さず、計画的なメンテナンスを実施することで、重大トラブルを未然に防ぐことが可能です。今後も現場目線での丁寧な点検を継続し、設備の安定稼働を支えていきたいと思います。
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